強烈な強みがなくても、フリーランスで生き残ることはできるか? サッカー選手を例に考えてみる。
よく勘違いしている人がいるのですが、なにか突き抜けた強みがないとフリーランスでは生き残れないと思っている人がいます。しかし、現実はそんなことはなく、意外にもオールマイティの人のほうが生き残っており、たっぷり稼げたりします。
なにかひとつの技術に突出するより、ある程度なんでも担えるようになるというのもフリーランスとして生き残る道です。例えば、デザイナーでも、ポスターなどのマス広告だけでなく、パンフレットやカタログもできるし、編集ページのデザインもできる。そういう人は本当に重宝されます。
サッカー選手を例に考えてみるとわかりやすい
誰よりも足が速いとか、シュートが上手いとか、ヘディングが強いとか、なにか誰にも負けないものを持っている人だけが日本代表に入っているわけではないですし、チームでレギュラーを獲得しているわけではないですよね。
特別な強みはなくても、ワールドカップに出場した選手もいます。阿部勇樹とか中田浩二とか、ユーティリティプレイヤーとかポリバレントとか呼ばれる選手です。
すべての能力が平均的に高くて、戦術理解度も高い。そういう選手は、素人が思っているよりも監督から重宝されます。
フリーランスの仕事も同じだと思います。その仕事(プロジェクト)の目的はなんなのか、その目的を達成するためには自分は“どう動けばいいのか”をしっかり理解している。そういうフリーランスは本当に貴重だと思います。
自分の仕事だけやっていればいい。そんなスタンスではダメ
現代サッカーでも、ひとつのポジションに任される役割は増えています。ディフェンスだからといって守備だけやっていればいいわけではありません。オフェンスにだって守備が求められます。
フリーランスも同じです。自分はデザイナーだから企画には絡まなくていいとか、コピーライターだからコピーのことだけ考えていればいい。そういうスタンスの人は、今の時代は生き残っていくのが難しいと私は思います。
その仕事の目的をどうすれば達成できるのか、いろんな職種の人が一緒になって考える。みんなでコンセプトや企画を考え、そしてコピーライターがデザインのことも考え、デザイナーもコピーについて考える。そういうチームが強いのです。
だから、「自分はデザイナーだからデザインのことだけしか考えない」というスタンスの人は、強いチームには呼ばれなくなります。必要とされません。たくさんの依頼が来て、お金を稼げるチームに加われなければ、その人は生き残っていくのは困難です。
自分の枠を自分で決めない
「私はWEBが専門だから」とか「私は紙媒体だけしかやらないので」といって、自分が担える範囲を自分で限定しないようにしましょう。
紙が専門のデザイナーであっても、時間のあるときにWEBのデザインの勉強もしておくのです。私自身も元々は紙媒体を専門にするコピーライターでしたが、Webのコピーや動画の台本を手がけるだけでなく、紙とWebのデザインもひと通りできます。
デザインについては知り合いの会社や店の広告物を制作するくらいで、大手企業をクライントとした仕事で私がデザインを担当することはありません。ただ、デザインの工程などをちゃんと知っているので、デザイナーとも深い話ができ、それはディレクターとしての自分の強みとなります。(私はコピーライターとディレクターを兼任することがほとんどです)
新しく身に付けるなら需要のある技術
例えば、紙を専門にするグラフィックデザイナーは仕事が減りつつあることにみんな危機感を抱いています。そのため、一眼レフカメラでの撮影技術を身に着けて「カメラマンもできます!」と言っている人も多いのですが、これはあまり意味がないと私は思っています。
もちろん、スタジオでタレントを撮れるくらいの技術と実績を持てば違います。しかし、デザイナーの「写真も撮れます」というのは、たいがいは取材(ロケ)で撮影ができるくらいです。
カメラマンも仕事が激減しています。デジタル一眼レフカメラの性能が大きく向上し、誰でも簡単に“ちゃんとした写真”を撮れるようになったからです。私でも撮れますし、プロデューサーや編集者なども撮れる人がほとんどです。
そんななか、デザイナーが「取材(ロケ)で写真も撮れます」と言っても仕事の依頼は少ないでしょう。わざわざ宿泊費や交通費を出してまで、デザイナーを同行させて写真を撮ってもらい、撮影料まで支払うなんてことは考えにくいです。ライターなどが自分で撮ってしまうと思います。
だから、グラフィックデザイナーで危機感を覚えているなら、Webのデザインや動画の編集などを覚えるべきです。デジタルカメラでの撮影技術のほうが簡単で手が出しやすいかもしれませんが、簡単に覚えられるものではお金は稼ぎにくいのです。
いろいろと書きましたが、強烈な強みをつくろうとひとつの技能を研ぎ澄ますよりも、仕事の幅を広げていく思考を持ったほうが今の時代はフリーランスとしてサバイブしやすくなっています。チャンスがあれば、どんどん新しい領域の仕事に挑戦していきましょう。